株式会社ナカボーテック
立替精算を原則廃止し、宿泊費は実費精算へ。上場インフラ企業が挑んだ働きがいのための出張改革
AI Travelの導入後で
宿泊費の定額支給
廃止
出張申請
事前必須
帰省旅費の現金支給
不要
課題
② 数カ月の長期出張で、若手社員が自分の給与を超える額を立て替えていた
③ 事後精算が中心で、経理部門が領収書を1件ずつ確認していた
効果
② 事前申請が必須となったことで、上長が出張を把握・確認する体制が確立
③ 経理の事務作業が減り、担当者に新しい業務を任せる余裕が生まれた
展望
キーワード
お話を伺った方々
宮地 誠様
代表取締役社長
相澤 靖裕様
経理部 執行役員 経理部長
杉本 浩美様
総務部
高度成長期に整備された社会インフラが、いま一斉に更新期を迎えています。その腐食を防ぐ電気防食のリーディングカンパニーとして、株式会社ナカボーテックは維持更新を支えてきました。全国13拠点、現場は北海道から沖縄まで及び、数カ月にわたる長期出張も珍しくありません。その宿泊費は、長く定額支給に委ねられてきました。同社は2026年2月にAI Travelを導入し、あわせて宿泊費を実費精算へと改めています。狙いにあったのは経費の削減ではなく、ガバナンスの強化と、従業員の働きがいでした。代表取締役社長の宮地 誠様、経理部長の相澤 靖裕様、総務部の杉本 浩美様にお話を伺いました。
事業
|
「働きがい」から出張を捉え直す上場インフラ企業
―まず、御社を取り巻く事業環境からお聞かせください。
宮地様 当社が手がけているのは、電気防食という技術です。港湾やエネルギー施設、橋梁といった社会インフラを、海水や土壌による腐食から守り、その寿命を延ばす。さびを防ぐ手法のなかでも最も信頼性が高いといわれるもので、創業以来、この技術一筋でやってきました。その高度成長期に造られたインフラが、いま次々と寿命を迎えつつあります。造り替えるのではなく、いまあるものを長く使う。その流れが、当社にとっては追い風です。事業の中心は現場での工事監督で、場所によっては数カ月単位で現地に入ります。拠点は北海道から沖縄まで、全国13カ所。出張は、当社にとって最も重要な業務のひとつです。
―そのなかで、いま最も力を入れておられることは何でしょうか。
宮地様 従業員の働きがいです。この4月にはベースアップと初任給の引き上げを行いました。当社は社員持株会が上位の株主に入っておりますし、OBの方々も株を持っておられます。従業員であると同時に、株主様でもあるわけです。ですから、その生の声を聞かないわけにはいきません。よって、本社の社長室で得られる情報よりも、現場に出向いて直接話を聞くことを大切にしています。

代表取締役社長 宮地 誠様
課題
|
定額支給と事後精算が生んだ立替負担
―AI Travel導入以前、出張の手配や精算にはどのような課題がありましたか。
相澤様 宿泊費は役職に応じた定額支給で、その範囲内でどう手配するかは出張者一人ひとりに任されていました。当時としては、これが一般的な運用だったと思います。ただ、支給の仕組みと、出張者に本当に必要な環境とが、必ずしも一致していない面もありました。精算のほうも、基本は出張後の事後精算です。領収書を経理に上げていただき、こちらで1件ずつ確認していく。この事務作業は、決して軽いものではありませんでした。

経理部 執行役員 経理部長 相澤 靖裕様
宮地様 コンプライアンスへの要請が厳しくなり、必要なものは会社が手当てするのが当たり前だという考え方が根付いてくると、従来の運用は時代に合わなくなってきます。以前にも一度、仕組みの導入を検討したことがあったと聞いています。そのときは見送りました。当時はまだ時期が早かったのかもしれません。
―出張する側から見ると、いかがだったのでしょうか。
杉本様 私自身、以前は出張する側におりました。ホテル、航空券、新幹線と、すべての領収書を持ち帰って経費精算システムに登録します。長期の現場に入る社員なら、その枚数は相当なものです。長期の宿泊や航空券が重なると、若手には重い負担でした。

総務部 杉本 浩美様
―経営として、どのような点を改めたいとお考えでしたか。
宮地様 狙いは2つありました。ひとつは、個人の裁量で金銭が動く余地を、仕組みの側で減らしていくこと。もうひとつが、仮払いの負担です。入社して数年目の若い社員が、1カ月2カ月の出張で自分の給料をはるかに超える額を立て替えている。エンゲージメントを高めたいと言いながら、足元でこういうことが起きている。そこを放っておくわけにはいきませんでした。
解決策
|
手配ツールではなく、出張規程そのものを変える
―検討はどのように始まったのでしょうか。
相澤様 私は前職で、出張手配の仕組みを使う環境におりました。ですから着任して、まだ紙と手作業で精算をしていると知ったときに、ここは変えられるのではないか、と感じたのです。ちょうど現場から提案が上がってきましたので、これはやるべきだろうな、と。複数社を比較検討しました。最後に決め手になったのは、AI Travelの使い勝手と画面の分かりやすさ、そして担当の方の対応です。
―その「運用そのもの」というのが、出張規程の改定だったわけですね。
相澤様 このタイミングで定額支給をやめ、実費精算に切り替えました。目安となる上限は残したうえで、実際にかかった額を会社が負担する形です。県別の宿泊費の目安は、AI Travelの担当の方にデータとして整備していただきました。上限を超えるとアラートが出る設定にしています。手配の仕組みだけを入れても、支給の考え方が変わらなければ意味がありません。
―長く続いた運用を変えることに、社内の反応はいかがでしたか。
相澤様 最初から歓迎されたわけではありません。何十年も続いてきたやり方を変えるわけですから、慎重な声は当然ありました。だからこそ、時間をかけています。役員向け、現場向けとデモをご用意いただき、出張の多い部署には直接足を運んで説明しました。その場にはAI Travelのカスタマーサクセスの方にも同席していただき、細かな運用の疑問にもその場で答えていただいています。制度の面でも、あわせて日当を引き上げました。実費精算に切り替えることで、出張者に不利益が生じないようにするためです。AI Travelを必ず使いなさい、という進め方もしていません。従来の手配も残したままで、ソフトランディングを意図したかたちです。

スマートフォンひとつで、予約から変更・キャンセルまでが完結する
定着と効果
|
立替はゼロへ。削減ではなく、働きがいのための出張
―導入から約5カ月が経ちました。変化はいかがでしょうか。
相澤様 航空券と宿泊費という、金額の大きい2つが、AI Travelから会社へ直接請求されるようになりました。立替が不要になり、出張者に持ち出しがありません。経理の事務作業も明らかに減り、担当者に新しい仕事を任せる余裕が生まれています。
杉本様 総務でも同じです。単身赴任者や若手社員の帰省旅費は、紙の伝票と金庫からの現金支給でしたが、予約番号を添えた申請に切り替えました。ペーパーレスとキャッシュレスが、同時に進んだかたちです。
―旅費の削減については、どうお考えでしょうか。
相澤様 本来はそこがテーマになるところですが、当社はむしろ削減を目指していません。9,000円お支払いするのであれば、9,000円のところに泊まって、ゆっくり休んでいただきたい。休んで、食事も取って、次の日の仕事に活かしてほしいのです。安く抑えるために現場から遠い宿を選んでいたものが、現場の近くを選べるようになりました。移動時間は短縮される傾向にあります。一方で、宿泊費そのものは上昇していますが、その分の意味はあると受け止めています。
―ガバナンスの面ではいかがでしょうか
相澤様 事後申請から事前申請へ切り替えました。誰が、いつからいつまで、どこへ出張するのか。それを上長が把握し、確認する体制ができました。
宮地様 上場企業ですから、内部統制がどうなっているかは常に問われます。そこはもう、自信を持って大丈夫になりましたと申し上げられる状態です。人の善意ではなく、仕組みで担保されていますから。
―現場への浸透という点では、手ごたえはいかがですか。
相澤様 慎重な声もあったなかで、着実に使われる場面が増えてきました。ここまで浸透したのは、AI Travelの担当の方が説明会に同席し、現場の細かな疑問にその場で答えてくださったからです。導入して終わりではなく、走り出したあとも伴走していただけたことが効いています。まだ道半ばですが、これから利用の幅を広げていける手ごたえはあります。
杉本様 もっとも、当社の現場は都市部から離れた土地が多く、電話でしか予約を受けていない民宿しか宿がない場所もあります。そうした出張まで乗せられるわけではありません。そこは、いまも変わらず残っている部分です。
展望
|
システム連携とデータ活用による進化
―次のステップとして考えておられることは何でしょうか。
相澤様 周辺のシステムとの連携です。AI Travelで予約すれば勤怠に反映され、支払いはマネーフォワード経費精算へ流れていく。いまはまだ別々に動いています。利用率が8割、9割と上がってくれば、いよいよ次のステップに行けると考えています。蓄積したデータを使った最適化は、その先の話です。
―最後に、今後の出張についてお聞かせください。
宮地様 どれだけ仕組みが整っても、直接会って話すというミッションだけは、なくならないと思っています。会社をこの先どう変えていくかを考えるうえで、現場でいま何が起きているのかを自分の目で見ないことには、何も始まりません。従業員の声も、現場でお客様からいただく声も、足を運ばなければ聞けないものです。今年も全国の拠点をまわります。出張とは、そのためにあるものだと思っています。
※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年7月当時のものです。