今治市(今治市役所)

旅費制度の改正を機に出張手配を一本化。紙の審査と職員の立替をなくした今治市の旅費業務改革

AI Travelの導入後で

人事課による旅費審査の工数

ほぼ0

AI Travel利用率

9割超

国内出張

研修・視察・イベント

愛媛発

課題

  • ① 旅費制度の改正で、概算払い・立替から実費精算への移行が必要になっていた
    ② 職員が数万〜10万円規模を立て替える負担があり、とくに若手職員に重かった
    ③ 紙申請を1件ずつ審査し、年間100時間以上を費やす人事課の負担が続いていた
  • 効果

  • ① 通常出張の職員立替の大部分が原則不要になった
    ② 定型の手配は審査がほぼ不要になり、本来業務へ時間を再配分できた
    ③ 変更・キャンセルもチャットで有人のオペレーターに相談でき、やり取りが記録として残るようになった
  • 展望

  • 蓄積した出張データを生かして旅費の適正化と職員の意識づけを進め、AI Agentによる手配・問い合わせの活用も見据える。
  • キーワード

    出張手配の一本化立替精算の解消審査業務の効率化旅費制度改正への対応ガバナンス確保行政運営の効率化

    お話を伺った方々

    今治市(今治市役所)

    越智 康浩 様

    総務部総務政策局 人事課 給与厚生担当 係長

    今治市(今治市役所)

    飯泉 一樹 様

    総務部総務政策局 人事課 給与厚生係 主査

    人口減少や少子高齢化が進むなか、限られた人員で市民サービスを維持しようと、今治市役所は早くから庁内業務のデジタル化に取り組んできました。そうしたなか、令和7年4月に施行された旅費制度の改正は、職員の出張手配や旅費精算のあり方を見直す大きな転機となりました。同市は、経費精算システム「楽楽精算」と連携できる出張手配サービス「AI Travel」を導入し、職員が費用を立て替える負担の軽減と、人事課が担ってきた審査業務の効率化を同時に進めています。制度の変化にどう向き合い、現場にどのような変化が生まれたのか。総務部総務政策局人事課の越智 康浩様、飯泉 一樹様にお話を伺いました。

    事業

    |

    限られた人員で、市民サービスを支える現場

    ―はじめに、人事課での皆さまのお立場と、今治市が進めてこられた業務のデジタル化についてお聞かせください。

    越智様 人事課給与厚生係で係長を務めています。出張手配については、サービス導入時の契約事務から、現在は職員からの問い合わせ対応までを担当してきました。市役所の内部業務としても、長く紙に押印していた出勤簿を昨年度から電子化し、時間外勤務の申請も画面上で完結できるようにするなど、足元のデジタル化を一歩ずつ進めてきたところです。

    総務部総務政策局 人事課 給与厚生担当 係長 越智 康浩 様

    飯泉様 私は人事異動の反映など、システム内部の手続きを中心に担当しています。今治市では令和4年度に「デジタル未来戦略」を策定し、市役所内のDXにとどまらず、市民サービスを支える取り組みを進めてきました。窓口でのキャッシュレス化や、コンビニでの証明書交付などがその一例です。人口減少が進むなかでも、高齢の方を含めて誰もが使いやすく、私たち職員にとっても働きやすい仕組みであること。その両立を大切にしています。

    ―今治市役所では、どのような出張が多いのでしょうか。

    飯泉様 国や県との会議や打ち合わせ、職員の研修、先進的な取り組みを進める自治体への視察、各種イベントやセミナーへの出席まで、内容は多岐にわたります。行き先も県内外と幅広く、日帰りのものもあれば、泊まりがけになるものもあります。限られた人数でこれだけの出張をこなしていますから、手配や精算の負担をどう抑えるかは、以前からの関心事でした。

    課題

    |

    紙の申請を一件ずつ――旅費の審査に追われる日々

    ―AI Travelを導入される前、出張の手配や旅費の精算には、どのような課題がありましたか。

    飯泉様 大きなきっかけは、令和7年4月に施行された旅費制度の改正です。戦後の制度を大きく見直すもので、これまでの定額による支給から、実費に基づく精算へと切り替わりました。あわせて、旅行代理店から自治体へ直接費用を支払えるようになったことも、見逃せない変化でした。改正前は旅行代理店から自治体へ直接請求ができず、職員がいったん費用を立て替えるか、概算で渡したお金を後から精算するしかなかったのです。近年は宿泊費も交通費も上がっていますから、規模の大きい出張になると、職員が数万円から10万円規模を立て替えることも珍しくありませんでした。とりわけ、採用されて間もない職員が研修などで急にまとまった額を負担するのは、決して軽い話ではありません。

    ―手配を管理する人事課の側では、どのような負担があったのでしょうか。

    越智様 以前は、職員が泊まりたい宿や移動経路、その金額を紙に出力し、旅行命令の決裁様式を添えて人事課に持ってくる、という流れでした。人事課はその1件ずつに目を通し、役職ごとに定められた宿泊の上限額との整合まで確認していました。出張の直前に「今日中に確認してほしい」と頼まれることも多く、他の業務の手を止めて対応せざるを得ない場面が少なくありません。職員の側にも、自分で立て替えるのは当たり前という意識が、自治体職員の慣習として根づいていた面もあったように思います。行政の現場では、一度始めた仕組みをなかなかやめられないところがあり、過剰とも思える確認作業が積み重なっていく。まずはここを何とかしたい、というのが出発点でした。

    解決策

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    経費精算システムとの連携で、手配から請求までを一つに

    ―数あるなかで、AI Travelを選ばれた経緯を教えてください。

    飯泉様 もともと経費精算システムとして「楽楽精算」の導入を進めており、それと連携できる出張手配サービスとして「AI Travel」を知りました。手配した内容がそのまま精算システムに引き継がれ、トランスファーデータ社から市へ直接ご請求いただける。改正で可能になった代理店への直接支払いと、立て替えに頼らない流れを、一つの仕組みのなかでつくれる点が決め手になりました。クラウド型のサービスでは、自治体ならではの厳密な契約事項の調整に双方で時間を要する場面もありましたが、そうしたやり取りも含めて、導入までを一つずつ整えていきました。

    ―実際に使い始めて、操作の印象はいかがでしたか。

    飯泉様 職員はこれまでも、それぞれが予約サイトで宿や交通を探していました。AI Travelでは、日付と出発地、目的地を入力すれば、新幹線や航空券、ホテルが一度にまとめて検索でき、複数の予約サイトを行き来したり、同じ条件を入力し直したりする必要がありません。乗換案内アプリのような感覚で、条件に合うルートや宿の候補が示されます。特別なマニュアルを読み込まなくても、画面に沿って進めれば手配が完結する点は、比較的受け入れやすかったように思います。導入にあたっては、従来の方式と新しいシステムを1カ月ほど並行して試用してもらい、職員には予約の手前まで操作を体験してもらいました。その間の質問をよくある質問としてまとめ、無理なく移行できるようにしたことが、後から振り返ると効いていたと感じます。

    検索画面

    日付・出発地・目的地を入力するだけで、手配に必要な条件がひとつの画面にまとまります。

    入力した条件で、航空券・新幹線・ホテルを一度にまとめて検索。複数の予約サイトを行き来する必要はありません。

    ―運用面で、今治市ならではの工夫はありますか。

    飯泉様 全職員にアカウントを付与するのではなく、課ごとにアカウントを割り当て、各部署の責任者の承認を通して手配と決済を進める形にしました。出張の必要性を、その職員の上司がきちんと判断したうえで手続きに進む。アカウントを絞ることで、誰がどの出張を手配しているのかを部署のなかで把握しやすくなり、自治体として求められるガバナンスにもつなげやすくなると考えています。

    定着と効果

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    審査の手間が消え、本来の業務へ時間を戻す

    ―導入後、現場と管理の双方で、どのような変化がありましたか。

    飯泉様 まず、課題だった職員の立替が、通常の出張では原則として大部分が不要になりました。手配した内容に応じて市へ直接請求が届くため、職員のもとでお金が動くこと自体が減り、思い違いによる経費の過不足が生じる余地も小さくなっています。現在は、出張手配に占めるAI Travel経由の利用率が9割を超え、宿泊や新幹線、航空券の手配は基本的にAI Travelに集約しています。

    ―管理する人事課の側では、いかがでしょうか。

    越智様 決められた手順で手配されたものは、人事課が個別に確認する必要がなくなりました。以前は、出張1件ごとに10分前後の確認を重ねており、出張は月に50件ほど、年間ではおよそ600件にのぼります。昨年度は複数人で合わせて年間100時間以上を旅費の審査に充てていましたが、定められた手順での手配についてはほぼ不要になりました。操作に関する問い合わせは残りますが、電話で数件対応すれば済む程度で、以前と比べれば負担はずいぶん軽くなっています。手配後はチャットで有人のオペレーターとやり取りでき、変更やキャンセルの相談まで任せられて、そのやり取りが文字で記録として残ります。このことも、現場が安心して使えている理由のようです。出張の旅費は市民の皆さまの税金が財源ですから、確認に追われる状態をなくし、流れを整えられたことには意味があったと受け止めています。

    展望

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    やらなくてよい仕事を見極め、人を本来の業務へ

    ―今後、AI Travelをどのように活用していきたいとお考えですか。

    飯泉様 短期的には、登録した出張ルールの精度を高めていくことが目標です。人事課による審査を前提としない運用に変わったぶん、後から見ると申請の解釈にずれが見つかることもあり、そうした余地を一つずつ減らしていきたいと考えています。あわせて、蓄積されていく出張のデータを生かし、旅費の適正化につなげたいと考えています。財源には限りがありますので、出張を過度に削るということではなく、適正な費用で必要な出張をしていただく。たとえば日程の組み方で費用がどう変わるかを職員に示すなど、データを使った意識づけにも挑戦していきたいです。

    ―最後に、出張手配の見直しを通じて目指す姿をお聞かせください。

    越智様 デジタル化というと、新しいことを次々に取り入れる印象を持たれがちですが、私はむしろ逆だと考えています。大切なのは、やらなくてよい仕事を見極めて手放し、空いた力を本当に必要な業務へ振り向けること。そのための手段としてデジタルを使う、という順番です。今回の見直しで、確認のための作業から手を離せたぶん、人を本来注力すべき業務へ戻していけます。入庁して20年になりますが、市全体の旅費の傾向を一覧で見たことは、これまで一度もありませんでした。蓄積したデータを職員に示すだけでも、一つの意識づけになります。まずはそこから、限られた力をうまく配分しながら、行政運営の質を少しずつ高めていけたらと思います。

    ※掲載している内容、所属や役職は取材を実施した2026年6月当時のものです。